齋藤孝 感化する力

  個人的に、人を感化し影響を与える力について、誰もが持つものだと考えている。例えば会議に出席して、難しい表情を作って何も発言しなくとも、それは同席する人に何かを感じ取らせ、会議の結論に不満があるのか? と問わせる。

他者に行動を取らせるのである。

吉田松陰は誰もが持つ「感化する力」が異様に強かった。

だから、かの有名な松下村塾の出身の塾生たちは明治政府・維新の礎を築いたとされる。

具体的に「感化する力」とは何なのか、知ることを目標に本書を手にとった。

 

吉田松陰に纏わる子細な経歴やその活躍の背景、著書については多くのメディアで著されている通りなので割愛し、本書を読んでの感想を以下に述べる。 

感化する力 ―吉田松陰はなぜ、人を魅きつけるのか

感化する力 ―吉田松陰はなぜ、人を魅きつけるのか

  • 作者:齋藤 孝
  • 発売日: 2015/03/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

  •  松下村塾の基本方針は「人間の潜在的な可能性を信じる」
    一点のマイナス点において、人の全てを否定しない。
    松蔭は年齢、身分も関係なく、誰からでも学び合おうとする姿勢が強かったと言う。野山獄という牢屋の囚人とも日本の将来について語り合い、勉強会を開いたというのは有名な話である。
     非暴力・非服従によってインド革命を成したガンディーに通ずる人間観だと感じた。結局、偉人の何が偉人たるかは、ここにあると言ってもいいのではないか。人間は大概のことを一人で成せず、他人の力を借りる。その時に、他人の力を引き出す鍵となるのが差別しない・誰であってもリスペクトの念を持って接することだ。逆に考えて、人間の可能性を信じていない人には、大業を成すエネルギーを持てないのかもしれない。こんなことを世のため人のためにして何になるのか、人間は所詮〇〇だから俺がここまでしてやる必要は…なと考えるようでは偉人の特徴である徹底した行動力は生まれる由もないだろう。
  • 実学主義
    行動を起こすことが目的であり、勉強はあくまでもその手段OR準備である。
    陽明学の「知行合一(考えていても行動しないのであれば考えていないことと一緒)」の思想。
     陽明学について勉強したいと思った。ここ最近の自分の読書ブーム(勉強)にはある程度内発的モチベーション的なところ(勉強したいから勉強する)があるけれど、これは何が目的なのか、少し疑問である。知識を蓄えて、それでどうするのか。。
  • 熱血リーダー
    錨のようにコンセプトを信じて言い続ける。強烈な意思にこそ人はついてくる。
     組織文化の変革について、ケーススタディの論文をいくつか読んだ時、やはりトップダウンでの組織文化変革には必須要件に思われた。これは持論だけど、人間は思ったより他人の話をちゃんと聞いていない。特に自分の考えの範疇の外にあるものについては、何回も言い続けないと覚えられない。うるせえなと思われても、何度も言い続けてこそ価値ある。逆に何度も言い続けられるほどに自分でそのコンセプトを信じなければ他人を変えられないし、組織を変えられないと言うことだ。
  • 範を示すリーダー
    松蔭は、大衆に現状の「大患」に気づかせることにおいて、矯正するのでなくリーダーが範を示すべきだと考えた。
    そもそも規則・礼法など細々と定めるより、自分から率先して行うに越したことはない。人君たる者が仁や義を行えば、下々に礼儀が行き渡らないと言うことはあり得ない。

 これはどうなのだろう。尤もなのだろうけど、本当にそれだけで「大患」に気づかせることはできるのだろうか。

  • 「新鮮な魂」
    松蔭は人(や書物)に「感化される力」も強かった。
    それは、高いエネルギーと豊かな感受性に因る。
  • 知情意
    人間の精神のバランス。よく保つ人が「人格者」や「人間性の高い人」として評価される。
    例えば、「知」が少なければ闇雲になってしまう。「知」だけ高くても、人の気持ちがわかる「情」が少なくてもいけないし、これをやり抜く「意」が会って初めて、周囲から一目置かれるのである。

 間違い無いのだけど、どうやってバランスを保つのか教えて欲しい。

  • 怒りを隠さず、怨みを留めず
    およそ人と交わる場合、怨みに思ったり腹が立ったりすることがあったら、すぐ相手に率直に忠告すべきで、これが道という者だ。もし忠告・直言できないならば、怨んだり怒ったりしないことだ。もしそうではなくて怨みや怒りを心中にかくし胸中に蓄えておいて、適当な時にこれをぶつけてやろうと考えるならば、それは陰険で柔弱な小人のすることで、誠に臆病な話だと言わねばなるぬ。

 これはやりがち。よくあるのが恋愛で女性は些細な怒りを溜めに溜め、ある時爆発して別れに至るなんてこと。確かに陰険。でも貫き通していたら話が進まないし、組織で怒りっぽくて変な人扱いされてしまうだろう。個人的には、そんなに怒ってまで貫き通す意志なんて無いと言うところ。。松蔭には意志薄弱なヤツとかって言われそう! おや? って顔に出すくらいはしていいのかもしれない。

  • 「至誠」、「誠」の3つの意味を行動原理とした
    1「実」空理空論に終わらせないで、今日から実行すること
    2「一」常にそのことを心掛けていること
    3「久」止むことのない事
     本当に人を想う「愛」なんかはこれ、当てはまるのでは無いかと感じた。。
  • いくつもの失敗は次の失敗の免疫となる。しかるべき人に感化され、感化できれば、些細なことは気にならなくなる。